原付、普通二輪、大型二輪。すべてのライダーのマナーアップで、バイクと社会のより良い関係を築いていこう|ジャパンライダーズ

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あこがれライダー インタビュー

国内最高峰GP500ccライダーとして活躍した後、全米選手権でもチャンピオンになるなど世界のトップレーサーとして活躍。近年は鈴鹿8時間耐久レース監督、安全運転講話、トークショーの司会やMotoGPのテレビ解説などマルチな才能を発揮する宮城光さんにバイクの未来を語ってもらいました。

バイクに乗る姿を胸を張って見せられるか

宮城さんが心がけるマナーを教えてください。

 身近な人に、自分がバイクに乗る姿を胸を張って見せられるか、という視点で走るようにしています。例えば、二輪車同士の同一車線上の追い抜きはしないようにしています。バイクはクルマに比べて左右に位置が動く可能性が高い乗り物です。追い抜きをしようとしたときに、前のバイクがちょっと自分の方に動くと当たってしまう。危険ですし、自分がされるのもイヤだからしないですね。
 あと横断歩道の歩行者妨害にも気をつけています。バイクは車体が小さい分、通ろうと思えば、いくらでも横断歩道をすり抜けて通れます。でも、多くの歩行者は怖いと感じるでしょう。急いでもいないのに、歩行者の間を縫って行くライダーも見かけます。そうしたライダーへの見方を変えたいので、ルールとマナー、そして歩行者を守りたい気持ちが強くありますね。

気になる「グッドマナー」を教えてください。

 良いライダーは、道と車の流れを良く見ている人だと思います。流れの中で、自分がどの地点にいるかを把握し、判断して、それを行動に移せる人ですよね。ちょっとしたことですが、出会いがしらで譲り合った時に、手をあげてお礼を言えるかどうか。そうしたキャッチボールができる人は、やっぱりカッコいいですよ。自分の周りには、歩行者や自転車の方、高齢の方やほかのライダーやドライバーなど、いろいろな人がいらっしゃるわけです。その中で意思表示がうまくできる人、相手の意思表示をうまくつかめる人はマナーがいいなと思います。“どうぞ”と手をあげることも、日頃からやっていないと恥ずかしかったりしますが、コミュニケーションを取らずに事故を起こしてしまう方が恥ずかしいですよね。

気になる「バッドマナー」を教えてください。

 今の時代、あちこちに人の目があります。街中の定点カメラやスマートフォンのカメラなど。一人ひとりが、いいドライバーの見本でいられるかという意識を持ってほしいと思います。先日見かけたんですけど、タバコを吸いながらバイクに乗るのは論外だと思います。喫煙は否定しませんが、吸う場所とタイミング、ごみの始末を考えたら、必ず道ばたに捨てますよね。あれではバイクがカッコ悪く見えてしまう。さっきも言いましたけど、バイクに乗っている姿を胸を張って見せられるかということですよね。

人の身体能力とバイクの進化は、反比例している

初心者ライダー、リターンライダーの方に気をつけてほしいことは?

 初心者の方は、見たらすぐに分かります。ほぼ路肩じゃないかというくらい、走行車線の左側を走る方が多いですね。教習所での指導や、対向車への不安もあると思いますが、左に寄りすぎると歩行者や自転車に対してギリギリのところだったりする。自分の走行車線のセンターよりちょっと左を走るくらいで十分なんです。あとはブレーキです。バイクはスキルによってすごく差が出るので、販売店でもっとしっかり「止まり方」を教えてあげる必要があると思います。止まるにも技術が必要ですから。
 リターンライダーの方は、“昔とは違う”ということだけ、分かっておいていただければ。反応速度とか体の動きは遅くなっているのに、バイクの性能は圧倒的に速くなっています。山の峠道でも、クルマを追い抜いた後に止まれず、事故になるケースが増えているんです。認知・判断・指示・操作が遅れる。1秒の判断が1.5秒になるだけで、もう数十メートル進んでしまう。バイクが速くなった分、情報処理をする時間は短くなっているんです。リターンライダーの方は、そこを注意していただきたいですね。もっと詳しく知りたい方は、僕のレッスンや安全講話にぜひ来てください(笑)

ライダー次第で変わるバイクだからこそ難しくて格好いい!

宮城さんにとって、バイクの一番の魅力とは?

 バイクは、「持ってよし、見てよし、乗ってよし」。僕は機械が好きなので、バイクの造形やメカニズムが好きなんです。好きなバイクを手に入れればうれしいし、人が絶えず操作していないと自立しない緊張感が魅力ですね。どう操るか、絶えず頭を使っています。それが脳に刺激を与えるからいいという話もあるんですよ。前後左右のバランスを取ったり、何が一番いいのかを精査しているんでしょうね。これは四輪とは決定的に違う刺激であり、楽しさです。バランス感覚が要求されるから、街中でごく低速で走っていても楽しめるんです。速く走るのはスポーツライディングだから、サーキットでやるべきなんですよ。

二輪のレースの見どころ、面白さを教えてください。

 抜きつ抜かれつの競争が見たいなら、二輪のレースです。ファンには怒られるかもしれないけど、F1の1シーズン分の抜いたり抜かれたりを、MotoGPでは1回のレースでやってます。それくらいアグレッシブなんです。それから二輪車は四輪車と違ってとても不安定で、人間が乗って操作を入力していないと自立することさえできない。飛行機やクルマのラジコンはありますが、バイクはラジコンにするのも難しい。人間が動かす影響力が出やすいものだと思います。昔の言葉でいえば人馬一体、今なら人車一体。人間が道具を操るスポーツでいうと、かなり面白いと思いますよ。

世界を驚かす、魅力あるバイクが未来を変えていく!

もっと日本にバイクファンを増やすために必要なことは?

 日本の二輪メーカーにもっと魅力的なバイクを作ってほしいですね。今まで日本は、世の中の乗り物すべてを変えるようなバイクを作ってました。途上国の人々が家族で乗れるバイク、アメリカ人の大陸縦断の夢を叶えるバイク、ヨーロッパの大手バイクメーカーが倒産するほどの技術を詰め込んだバイク、保安部品のついたバイク。全世界の人々が「おおっ!」と思うようなバイクを出してきていたんです。これからも、世界に発信して「こんなやり方があったのか!」と思わせるものを、僕らは見たいんですよ。
 そういうバイクが生まれれば、新しい世代の人たちも買うようになる。マンションにバイクの駐車場があるのが当たり前になったり、公的なインフラも変わってきますよね。日本製のバイクは信頼の塊で、良いものなんですけど、良いものと魅力あるものは別なんです。僕なら、スクーターのように操作が簡単な超スーパースポーツバイクがほしいですね。それは、四輪車ではもう達成されているんですよ。二輪車も、より革新的で魅力あるものづくりをしていってほしいと思っています。

世界のトップクラスで活躍した宮城さんだからこその、熱い思いを語ってくれました。
これからも私たちのあこがれライダーとして、活躍を期待しています。

取材年月日:2016年2月8日(月)
取材場所:一般社団法人 日本二輪車普及安全協会 本部